事例32不貞行為をしていないとの虚偽報告をしたことを不法行為と認定して慰謝料請求を認めた地裁判決に対し、これに控訴して請求を全面的に排斥した事例
- 担当弁護士堀 大祐
- 事務所長崎事務所
ご相談内容
依頼主
Gさん(30代・女性)
長崎県在住のGさんは、不貞行為に基づく慰謝料を請求する書面が弁護士から届いたとして相談に来られました。
Gさんによれば、Gさんは婚活アプリである男性(Aさん)と知り合って交際を始めましたが、その後、女性(Bさん)から電話があり、Aさんが既婚者であることを告げられました。
そのため、Gさんは、Aさんに事実確認したところ、AさんがBさんと婚姻していることを認めたため、Aさんとの交際を終わらせたとのことでした。
弁護士の活動
当事務所は、相手方に対し、Aさんが既婚者とは知らずに交際していたこと、知った後はすぐに交際を終了していることから不法行為は成立せず慰謝料の支払義務がないとの回答をしました。
その後、Aさんは、Gさんに対し、不貞慰謝料200万円請求する訴訟を提起しましたが、訴訟ではGさんがAさんが既婚者であることを知った後も交際(肉体関係)が続いていたかが主な争点となりました。
その後、訴訟の終盤に相手方から、GさんがAさんが既婚者であることを知った(Bさんからの電話を受けた)後に、AさんとGさんが旅館に宿泊した調査報告書が提出されました。
上記証拠が提出されたことで、形勢は一気にGさんに不利になりました。
一方、Aさんは、今回の件でBさんと離婚することになりましたが、離婚にあたって、BさんがAさんに離婚慰謝料を300万円支払っていることが発覚しました。
そのため、当事務所は、予備的に、Bさんの損害は、Aさんの離婚慰謝料の支払いで既に填補されているとの主張を追加しました。
解決結果
この点、裁判所は、AさんとGさんに不貞行為があったことを前提に、Bさんの不貞慰謝料はAさんからの離婚慰謝料の支払いで填補されているものの、GさんがAさんが既婚者であることを知ってから交際をやめたと虚偽の報告をしたことを不法行為ととらえ、30万円の支払いを命じる判決を出しました。
そのため、当事務所は、上記判決に対して控訴し、仮にGさんの虚偽回答があったとしても、権利侵害(事実に基づく回答を受ける法的利益)がないため不法行為が成立しない旨を主張しました。
その結果、控訴審は、交渉及び訴訟における真実義務は負っておらず不法行為は成立しないと当方の主張を認め、相手の請求は全面的に排斥されました。
弁護士のコメント
依頼者にとって不利な事情はできれば話したくないこともあるかもしれません。
もっとも、今回のケースのように、訴訟での主張内容が仮に事実と異なると認定されたとしても、それが損害賠償の対象になるかは別問題です。
また、今回のケースのように、不貞慰謝料について、相手方の配偶者から別途慰謝料の支払いが相手方に行われている場合、これを考慮して慰謝料の支払いを判断するのが通常ですので(不貞行為に基づく損害賠償債務が不貞相手と一方配偶者との不真正連帯債務であるため)、この点の調査も非常に重要になります。
離婚・男女問題トラブルでお悩みの方は、これらの分野に詳しい弁護士に早めにご相談されることをお勧めします。
文責:弁護士 堀 大祐