婚姻費用・養育費の算定方法

算定表に該当しない場合の
婚姻費用・養育費の計算方法

婚姻費用・養育費の具体的な金額については、当事者の話し合いで決めるのが原則です。協議ができない場合や折り合いがつかない場合には、調停や審判の手続きを利用することになります。調停や審判では算定表が広く使われていて、子供の人数や年齢から表を選択し、両親の収入を当てはめることで、簡易に迅速に金額がわかるようになっています。

算定表はさまざまなパターンを想定して用意されていますが、子供を一人ずつ引き取った場合などは、該当しないこともあります。ここではご自身で計算できるように、算定方法をご説明します。

まずは夫婦それぞれの基礎収入を計算します。基礎収入とは可処分所得のことで、税金や社会保険料を除き、個人が自由に使える実収入を指します。公租公課(税金・社会保険料)や職業費(交通費・通信費)、特別経費(住所や医療などの経費)を、総収入から差し引いて計算するのですが、給与所得者の場合と自営業者の場合で、税法や統計に基づいた標準的な割合が決まっているので、以下の表から計算して、割り出すことができます。

給与所得の割合
総収入 基礎収入割合
~100万円 42%
~125万円 41%
~150万円 40%
~250万円 39%
~500万円 38%
~700万円 37%
~850万円 36%
~1,350万円 35%
~2,000万円 34%

たとえば総収入が500万円なら、500万円×38%=基礎収入190万円。
総収入が200万円なら、200万円×39%=基礎収入78万円という計算になります。

自営業者の割合
総収入 基礎収入割合
~421万円 52%
~526万円 51%
~870万円 50%
~975万円 49%
~1,144万円 48%
~1,409万円 47%

自営業者の場合は、たとえば総収入が500万円なら、500万円×51%=基礎収入255万円。
総収入が200万円なら、200万円×52%=基礎収入104万円という計算になります。

次に生活費指数を把握しましょう。成人の必要とする生活費を100とした場合、子供の生活費の割合は、年齢によって設定されています。
0歳~14歳=子供の生活費指数55
15歳~19歳=子供の生活費指数90

義務者=婚姻費用・養育費を支払う人、権利者=婚姻費用や養育費の支払いを受ける人を指します。一般的に収入の多い方が義務者となり、収入の少ない方が権利者となります。

婚姻費用の算定式

子の生活費(義務者の基礎収入のうち子供に振り分けられる生活費)(A) =義務者の基礎収入×権利者が養育する子供の生活費指数÷(義務者の生活費指数+義務者が養育する子供の生活費指数+権利者が養育する子供の生活費指数)

  • 義務者が分担する養育費の額 =(A)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
  • 婚姻費用の分担額=(A)-権利者の基礎収入

たとえば、夫も妻も給与所得者で、16歳の子を夫が養育、12歳の子を妻が養育する場合。

  • 夫の基礎収入 500万円×38%=190万円
  • 妻の基礎収入 200万円×39%=78万円
  • 16歳の子の生活費指数=90
  • 12歳の子の生活費指数=55

権利者(妻)世帯の生活費

  • (190万円+78万円)×(100+55)÷(100+55+100+90)=120万4,050円

婚姻費用分担金

  • 120万4,050円-78万円=42万4,050円

したがって、夫が妻へ、年額42万4,050円支払うことになります。

養育費の算定式

  • 子の生活費(義務者の基礎収入のうち子供に振り分けられる生活費)(A) =義務者の基礎収入×権利者が養育する子供の生活費指数÷(義務者の生活費指数+義務者が養育する子供の生活費指数+権利者が養育する子供の生活費指数)
  • 義務者が分担する養育費の額 =(A)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

双方が子供を養育する場合は、それぞれ相手が養育する子供に対して養育費を支払うことになるので、お互いの負担額を算出して差額を支払うことになります。
たとえば、16歳の子を夫が養育、12歳の子を妻が養育する場合は以下の計算になります。(夫も妻も給与所得者で、基礎収入は夫190万円、妻78万円)

12歳の子の生活費

  • 190万円×55÷(100+90+55)=42万6,530円

義務者(夫)が分担する養育費の額

  • 42万6,530円×190万円÷(190万円+78万円)=30万2,390円

16歳の子の生活費

  • 78万円×90÷(100+90+55)=28万6,530円

権利者(妻)が分担する養育費の額

  • 28万6,530円×78万円÷(190万円+78万円)=8万3,300円

双方が負担すべき額の差引額

  • 30万2,390円-8万3,300円=21万9,090円

したがって、夫が妻へ、年額21万9,090円支払うことになります。

婚姻費用・養育費の
算定方法の詳細

1.概要

婚姻費用、養育費の具体的な額については、当事者間の協議で決定するのが原則です。もっとも、協議ができない場合や当事者間の今日では折り合いがつかない場合には、調停や審判手続を利用することになります。
調停・審判では、簡易迅速に婚姻費用や養育費の算定が可能な算定表が広く使われています。算定表は、子供の数や年齢から票を選択して、両親の収入を当てはめることで婚姻費用や養育費の額が分るようになっています。
算定表は、子どもの年齢や人数の様々なパターンを想定して用意していますが、想定しているパターンに該当しない場合もあります。
そこで、婚姻費用と養育費についての算定方法を説明します。

2.算定式

(1)用語について

ここでは、権利者は、婚姻費用や養育費の支払いを受ける者、義務者は支払いをする者を指します。
基礎収入とは、可処分所得のことです。給与所得者の場合は、総収入(税込収入)から①公租公課②職業費③特別経費を控除して算出します。自営業者の場合は、総収入から①と③を控除して算出します。

職業費とは、収入を得るための経費のことで、例えば交通費や通信費などです。特別経費とは、住居関係や保険料や医療費などの経費のことを指します。
もっとも、①~③の具体的な金額を出さなくとも、①は税法に基づき総収入から標準的な割合が算出でき、②、③については統計に基づいて標準的な割合が算出できるので、①から③が総収入に占める割合である「基礎収入割合」で基礎収入は算出できます。
給与所得者の場合、基礎収入は総収入の概ね34~42%の範囲になります。自営業者の場合は、基礎収入は総収入の概ね47から52%の範囲内となります。総収入に応じた基礎収入割合は以下のとおりです。

給与所得者の場合
総収入(万円) 基礎収入割合(%)
~100万円 42%
~125万円 41%
~150万円 40%
~250万円 39%
~500万円 38%
~700万円 37%
~850万円 36%
~1,350万円 35%
~2,000万円 34%
自営業者の場合
総収入(万円) 基礎収入割合(%)
~421万円 52%
~526万円 51%
~870万円 50%
~975万円 49%
~1,144万円 48%
~1,409万円 47%

子どもの生活費指数とは、成人の必要とする生活費を100とした場合の子どもの生活費の割合です。

年齢 生活費指数
0歳から14歳 55
15歳から19歳 90

(2)婚姻費用の算定式

ア 権利者世帯の生活費
  • =(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷全体の生活費指数
イ 婚姻費用分担額
  • =ア-権利者の基礎収入
ウ 具体例

義務者の総収入500万円、権利者の総収入200万円、16歳の子を義務者が養育、12歳の子を権利者が養育する場合

  • 義務者の基礎収入 500万円×38%= 190万円
  • 権利者の基礎収入 200万円×39%= 78万円
  • 16歳の子の生活費指数 90
  • 12歳の子の生活費指数 55

権利者世帯の生活費

  • (190万円+78万円)×(100+55)÷(100+55+100+90)=116万7,400円

婚姻費用分担金

  • 116万7,400円-78万円=38万7,400円(年額)

(3)養育費の算定式

ア 子の生活費(義務者の基礎収入のうち子どもに振り分けられる生活費)
  • =義務者の基礎収入×権利者が養育する子どもの生活費指数÷(義務者の生活費指数+義務者が養育する子どもの生活費指数+権利者が養育する子どもの生活費指数)
イ 義務者が分担すべき養育費の額
  • =ア×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
ウ 具体例

義務者の総収入500万円、権利者の総収入200万円、16歳の子を義務者が養育、12歳の子を権利者が養育する場合
双方が子どもを養育する場合、それぞれ相手が養育する子どもに対して養育費を支払うことになるので、それぞれの負担額を算出して差額を支給することになります。

12歳の子の生活費

  • 190万円×55÷(100+90+55)=42万5,600円

義務者が分担すべき養育費の額

  • 42万5,600円×190万円÷(190万円+78万円)=30万1,750円

16歳の子の生活費

  • 78万円×90÷(100+90+55)=28万6,260円

権利者が分担すべき養育費の額

  • 28万6,260円×78万円÷(190万円+78万円)=8万3,300円

双方が負担すべき額の差引額

  • 30万1,750円-8万3,300円=21万8,450円(年額)