事例37婚約中の男性と不貞行為に及んだとして訴訟にて不貞慰謝料を請求されたものの、女性に婚約関係を破綻させる意思がなかったとして請求を全部棄却する判決を得た事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Lさん(20代・女性)
福岡県在住のLさん(女性)は、Aさん(女性)より、LさんがAさんの婚約者であるBさん(男性)と不貞行為に及んだとして、不貞慰謝料を請求されたとのことで当事務所に相談に来られました。
Lさんによれば、Bさんとの交際を開始した当時、Bさんには婚約者がいると聞かされてはいましたが、上司と部下という関係からBさんと親密になり、肉体関係に及んでしまったとのことでした。
弁護士の活動
Aさんは、Lさんに対し、不貞の慰謝料請求として訴訟を提起しました(請求額:300万円)。なお、Aさんは、Bさんとは1年程度同棲していたことから、婚約のみではなく、既に内縁関係にあった旨主張しました。
これに対し、当事務所は、Bさんの協力を得てAさんとBさんとのLINEのトーク履歴を入手するなどしてして、AさんとBさんが内縁関係になかったこと、AさんとBさんとの婚約解消はAさん自身の心変わりによるものであること、Aさん自身も他の男性と肉体関係に及んでいること等を主張し、そもそも不法行為が成立しない旨主張立証しました。
解決結果
その後、裁判所は、LさんがAさんに対して解決金として50万円を支払う旨の和解案を提示しました。
もっとも、当事務所は、Lさんが社会人経験が浅く資力がないこともあり、裁判所の上記和解案を拒否し判決を求めました。
その結果、裁判所は、①AさんとBさんとの内縁関係を否定した上、②Lさんには婚約関係を破綻させようという意思を持ってBさんと肉体関係を持ったことは認められないため、LさんはAさんに対する不法行為責任を負わないとし、Aさんの請求を全面的に排斥する判決を言い渡しました。
弁護士のコメント
婚約は、内縁のように当事者間に夫婦としての生活実態が伴っていない関係ですから、第三者が責任を負うのは例外的な場合に限られ、婚約当事者による婚約解消に正当な理由がなく、かつ第三者が強いはたらきかけや不当な干渉をして解消させたことが、第三者の責任発生の要件といえます。
そのため、単なる婚約状態であれば、通常の婚姻関係や内縁関係よりも、パートナーと肉体関係に及んだ不貞相手に対する慰謝料請求のハードルが高いといえます。
本件でも、裁判所は、上記基準を前提に、Lさんが婚約関係を破綻させようという意思を持って肉体関係を持ったといえるかを検討し、そのような事実関係はなく単に肉体関係を持ったに過ぎないことから、不法行為責任を否定しています。
世間的には、婚約していれば夫婦と同様に不貞慰謝料請求ができると考えている方も多いと思いますが、婚約のみしか成立していない場合は別の考慮が必要になります。
不貞慰謝料を請求された場合、慌ててどうしたらいいか分からなくなるのが当たり前だと思いますが、まずは落ちついて離婚・男女問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
文責:弁護士 永野 賢二