事例13ラブホテルの出入りが撮影された調査会社の報告書があるものの、相手方が不貞行為を否定したために訴訟を提起し、慰謝料を回収した事例
- 担当弁護士鶴崎 陽三
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
Mさん(30代・男性)
福岡県在住のMさんは、妻が不倫をしたので不倫相手に慰謝料請求したいということで、当事務所に相談に来られました。
なお、Mさんは、既に調査会社に調査を依頼され、ラブホテルの出入りを行っている写真を調査会社に撮影してもらっていました。
また、Mさんは、当事務所に相談に来られた時点では、まだ妻に不貞行為を問い詰めていない状況でしたが、妻側からは離婚を求められている状態でした。
弁護士の活動
当事務所は、Mさんに対し、不貞の慰謝料は妻と不倫相手のいずれにも請求できることを説明しましたが、子どものことも考えると妻にはお金を請求したくないとの意向でしたので、慰謝料請求は不倫相手に対してのみ行うこととして受任しました。
また、離婚については、親権について争いがないこと、分与の対象となる財産もなかったことから、とりあえず弁護士をつけずに本人と妻で協議してもらうこととしました。
当事務所は、不貞相手に対し、不貞行為に基づく慰謝料を請求する文書を送付しましたが、相手方が不貞行為の存在を否認したことから損害賠償訴訟を提起しました。
この点、調査会社の報告書は、Mさんと不貞相手とのラブホテルへの出入りを写真に収めたものであり、通常であればそれだけで不貞行為の存在が立証できるものでしたが、相手方から不貞行為の存在に疑問を抱かせる反論(アパレルの女性モデルとして妻の写真撮影をするためにラブホテルに入っただけであるとの主張で、実際に調査会社の報告書でラブホテルに入った日時を撮影日時とする写真、上記アパレルのサイトも証拠として提出されました。)がなされたため、不貞行為の存在自体が争いとなりました。
もっとも、当事務所は、ラブホテルへの入退室と撮影日時に若干のズレがあるため(入室から最初の撮影時刻まで30分程度、最終撮影時刻から退室まで45分程度のタイムラグがありました。)、肉体関係に及ぶことは十分にできたといった趣旨の反論を行ったり、被告ないし妻に対する詳細な証人尋問を行いました。
解決結果
その結果、裁判官に対し不貞行為があった可能性が高いとの心証を与えることができ、若干の譲歩はしたものの不貞行為を前提とする慰謝料額に近い金額(125万円)での和解が成立しました。
また、離婚については、本人同士の話し合いで調停に至ることなく協議離婚が成立しました。
弁護士のコメント
配偶者と不貞相手とがラブホテルに出入りしている調査会社の報告書がある場合、通常はそれだけで不貞行為の立証としては十分であり、慰謝料を増額する事情や減額する事情が裁判の争点となる場合がほとんどです。
しかし、まれに相手方から不貞行為の不存在について有効と思われる反論がなされることがあり、裁判官の判断を揺るがせることがあります。
このような場合、弁護士のような専門家でなければ反論に対する有効な再反論をすることが困難なケースが多いでしょう。
今回は弁護士が依頼を受けた後で相手方から上記の反論がなされたケースですが、弁護士に依頼する前に相手方から有効な反論がなされた場合には、離婚・男女問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
文責:弁護士 鶴崎 陽三