財産分与について

婚姻期間中に築いた財産を分配する、
財産分与についてのご説明

夫婦が共同で築いた財産を離婚時に分け合うことを財産分与といいます。対象となるのは、現金や預貯金、不動産、自動車、保険料、年金、退職金、有価証券、家財などです。どちらか一方の名義になっていたとしても、夫婦共有の財産であり、財産分与の対象となります。プラスの財産に限らず、住宅ローンや教育ローン、生活費のために借りた借金も対象であり、プラスの財産からマイナス分を差し引き、分配する方法が一般的です。ただし、たとえば婚姻前にそれぞれが形成した預貯金、浪費やギャンブルで個人的に作った借金などは財産分与の対象とはなりません。また、慰謝料とは異なり、不貞行為などで離婚原因を作った側からも請求ができます。

財産分与の割合は、原則として1:1とされています。専業主婦(主夫)で収入がなかった場合でも、一方が働いて収入を得られるのは、他方が家庭で家事や育児を行うという協力があってこそだといえるからです。

まずは共有財産を洗い出し、ひとつひとつの分配方法を決めていきます。話し合いがまとまらない場合は、調停・審判で解決を目指すことになります。

注意したいのは、財産分与を請求できるのは、離婚成立から2年という期限があることです。離婚時に財産分与の取り決めをせず、まずは離婚を優先したいという場合もあるかもしれません。しかし、離婚後に相手と連絡がとれなくなってしまったり、財産を整理・処分されてしまったりということもあるかもしれません。もらえるはずの財産をもらえなくなることを避けるためにも、できるだけ早く手続きを進めましょう。

土地や建物が共有財産にある場合、不動産や税務の専門的な知識が必要です。また、対象となる財産に見落としがないか、分割の割合が公平であるかなど、調査や交渉が必要になります。弁護士にご相談いただければ、ご自身の負担を軽減し、公平に財産を分けるお手伝いをさせていただきます。

財産分与についての詳細

1.概要

財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、他方に対して、財産の分与を求めることをいいます。(民法768条)
離婚後にも財産分与の請求をすることはできますが、離婚をするときにきちんと夫婦の財産について取り決めをしておかなければ、もらえるはずの財産をもらえないことになってしまう可能性があります。

2.財産分与の性質

財産分与は、3つの性質を有すると解されています。

(1)清算的財産分与

夫婦が婚姻期間中に協力して形成・維持した財産を清算するという性質で、財産分与の中核部分です。
離婚に至る原因について責任のある配偶者であっても、財産の形成・維持に貢献しているのであれば請求が認められることになります。

(2)扶養的財産分与

離婚後に夫婦の一方が生活に困窮するなどの経済的な弱い立場の者に対して、生計を補助するという扶養的な目的で財産を分与することをいいます。

(3)慰謝料的財産分与

離婚の際、離婚原因を作った有責配偶者に対して、他方が慰謝料請求することがあります。この慰謝料請求は法的には、損害賠償請求権であり、財産分与とは性質が異なります。しかし、お金の問題という点は共通しているので、明確に区別せずに、財産分与の際に慰謝料分も含めて処理することがあります。このような場合の財産分与には、慰謝料的な性質が含まれていることになります。

3.財産分与の対象となる財産

(1)財産分与の対象

財産分与の対象は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成・維持した財産です。このような財産は、夫婦共有財産であり離婚する際には分配するのが公平です。婚姻期間中に取得した財産は、共有財産であることが推定されます(民法762条2項)。また、共有財産であるか否かは、実質的に判断されますので、財産の名義が夫婦の一方となっていても夫婦が協力して形成・維持した財産であれば、財産分与の対象となります。
また、離婚する前であっても、別居していれば別居開始時点が基準となり、その時点の共有財産が分与の対象となります。

(2)年金

厚生年金等の年金についても、財産分与の対象となります。

(3)退職金

退職金は、給与の後払い的性格があるため、給与と同様に財産分与の対象となります。もっとも、財産分与の対象とするには、退職金が確実に支給されるという見込があることが必要となりますので、退職まで何十年もある場合には支給されることが確実とは言えないため財産分与の対象とはなりません。また、退職金が確実に支給される場合でも、その全額が財産分与の対象となるのではなく、勤務期間に占める婚姻期間の比率を乗じた額を財産分与の対象とする考えが有力です。

(4)マイナス財産

婚姻期間中に夫婦の共同生活を維持するために負った借金は、財産分与の対象となります。他方で、浪費やギャンブルのために負った借金は、夫婦の共同生活を維持するためではありませんし、公平の観点から分与の対象となりません。

(5)分与の対象にならない財産

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産を「特有財産」といいます(民法762条1項)。財産分与の対象は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成・維持した財産ですから、婚姻前から有する財産が対象にならないのは当然です。例えば、婚姻前から有する預貯金や不動産等です。

他方、「自己の名で得た財産」とは、一方の名義になっている財産ですが、その財産の形成・維持に他方の貢献がないといえなければ、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」となり、共有財産と推定されます(同条2項)ので、特有財産となりません。例えば、相続で取得した財産です。

4.対象財産の評価

不動産の場合、その価値を評価する必要があります。裁判では、原則として、別居時に存在する夫婦の不動産を裁判時の時価によって評価します。不動産業者の査定書をお互いに出して中間の額で妥協したり、路線価、固定資産評価証明書を利用したりして価値を決めていきます。
また、非上場会社の株式等、価値の評価が難しい場合に争いが生じると専門家に調査して評価してもらうことになります。

5.財産分与の割合

家庭裁判所は、夫婦の一切の事情を考慮して、財産分与の額や方法を定めますが、財産形成・維持に対する寄与度を証明することは困難です。そこで、実務においては、特段の事情がない限り、夫婦が2分の1の持分を有するとされ、2分の1の割合で分与することになります。

6.財産分与の方法

(1)協議

分与の対象となる財産をお互いに開示して、どのように分配するかを決めていきます。お互いが納得できれば、自由に合意できます。後々争いとならないように、協議の結果は書面等に残しておきましょう。

(2)調停

夫婦での話し合いで解決できない場合には、離婚調停と併せて財産分与についても話し合うか、財産分与請求調停において話し合う方法があります。

(3)離婚裁判

離婚調停で併せて財産分与についても調停で話し合っている場合に調停が不成立となれば、離婚訴訟を起こし、財産分与についても判決で解決を図ることになります。

7.財産分与の期限

財産分与は、離婚後に請求することができますが、離婚後2年以内に財産分与の請求をする必要があります。この2年という期間は、除斥期間とされ時効と異なり停止や中断がありませんので、2年以内に家庭裁判所に調停を申立てる必要があります。